現役探偵が語る「高所得転職者の入社前調査 ~その知られざる実態~」第11話 

現役探偵が語る「高所得転職者の入社前調査 ~その知られざる実態~」第11話

現役探偵が語る「高所得転職者の入社前調査 ~その知られざる実態~」
採用担当者が語る、探偵に求められる資質とは?
入社志望者の借金は? 素行は? 経歴は本当?
などなど、採用企業が本気でお金をかければ調べられないことはありません。

高額所得者を雇うからこそ、志望者への調査は仔細に渡ります。調査の現場では、果たして何を調べられているのでしょうか?その方法とは一体どのようなものでしょうか?

本シリーズでは、実際にあった入社前調査の実例を、現役探偵が語ります。
採用担当者が語る、探偵に求められる資質とは?

■最終回は探偵の採用裏話

10回に渡って企業の雇用調査について語らせていただいたこの連載も今回で最終回。実は私も所属する探偵社では採用担当ですので、ラストは探偵ならではの採用基準についてお話したいと思います。一般の事業会社の面接を受けるつもりになって、私が繰り出す質問に、自分ならどう答えるかを想像してみると面白いかもしれません。

面接の場に現れる探偵志望の若者は、正直なところ、常識に欠けるタイプが多いというのが現実です。面接時に部屋に入ってきた私に対して、立って挨拶出来るのは10人に1人。口から出るのは大言壮語と独りよがりな自己分析ばかりです。開始1分で不採用となるケースも珍しくありません。しかし、調査現場に関しては場数と度胸と自信も重要なため、それらに強みがあると思えれば、多少の常識の欠如には目をつぶって「とりあえず採用!」となることも稀にあります。

■探偵の資質を見抜く二つの質問

とはいえ、探偵というのは、皆様が想像するよりも狭き門です。長年の面接官経験から、私は必ず二つの独自の質問をするようにしています。それをクリアしないと採用はしません。

ひとつ目は「いわゆる“すべらない話”をしてください」というもの。話が面白ければ採用!というわけではなく、無茶振りへの対処がスムーズに出来るかどうか、相手を話に引き込もうと考えて喋っているか、語の構成に破綻がないかをチェックします。

調査では知らない人と話して情報を掴むことが大事ですので、強烈なアドリブ能力が毎回試されます。「私はそういう話は持ってないんです。申し訳ありません」とごくごく常識的な回答をした人は残念ながら不採用です。この能力は、一般の営業職にも求められる資質ではないでしょうか。「この質問、何か意味あるんですか?」とムキになって噛みついてきた候補者には、その意図を伝えた上で、「では、お願いします」と改めて要求します。

もう一つの質問は「昨日のお昼、何を食べましたか?」です。この質問の意図は記憶力を測るためではなく、解答までにどれぐらいの時間を要したかを見ます。実際に何を食べたかは自分にしか分からないわけですから、答えの正確性よりも、素早く、リズムよく答えを返せることが重要です。なぜならば、聞き込みの最大の敵は「沈黙」だからです。

■探偵で求められる資質は決して特殊なものではない

応募者の中には「探偵として現場には出たくないけど、カウンセラーならやりたい」という人も多くいます。探偵社におけるカウンセラーとは、相談にやってくるお客様の窓口となる人たちで、皆様もテレビでもご覧になったことがあるかもしれません。そんな彼らに対しては「あなたはこの会社でどんなカウンセラーになりたいですか?」と聞きます。

皆さんこの質問には、待っていましたとばかりに立派なことを仰います。おそらく弊社のホームページをご覧になっていただいたのでしょう。しかし私は「この会社で」と言っているのですから、解答に「利益貢献」が含まれない人はどんなに優れたカウンセリング能力がありそうでも採用しません。これは、どんな会社の面接でも同じことが言えるはずです。

探偵社のカウンセラーは、満足度が非常に高い仕事です。一年中涙を流して感謝される仕事なんて世の中そう多くはありません。「良いことしたなあ」の快感には抗えないものがありますが、私が求めるのは「調整能力」です。

シビアな現実を相手に仕事をしているという自覚を持ちながら、早朝深夜を問わず電話してくる依頼者の無理難題な要求に応えつつ、調査担当者たちをやる気にさせ、時におだてていかに気分よく現場に送り出すかという苦労が必須となります。単に「困っている人を助けたい!」のなら、それはボランティアの仕事です。

このように、探偵で求められる資質は決して特殊なものではありません。甘い気持ちで門を叩く若者も多いですが、探偵で活躍できる人は、一般事業会社でもしっかりと結果を残せる人達だと私は考えています。

それでは、短い間でしたが私の拙文に毎週お付き合いいただきましてありがとうございました。また近いうちに違った形でお会い出来る日を楽しみにしております。

■著者プロフィール
木島球六(きじま・きゅうろく)(仮名)

大学卒業後、某酒造系メーカーに就職。営業マンとしてそこそこの実績をあげていたが、だいぶ仕事に飽き始めていたところ、ある日ポストに入っていた「探偵募集」のチラシが目に入る。興味本位で探偵事務所を訪問してから早10年。今では事務所で一番のベテランとなっている。年間250本の調査依頼をこなす傍ら、採用責任者として年間50人以上の探偵志望者の面接も行っている。

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