現役探偵が語る「高所得転職者の入社前調査 ~その知られざる実態~」第10話 

現役探偵が語る「高所得転職者の入社前調査 ~その知られざる実態~」第10話

現役探偵が語る「高所得転職者の入社前調査 ~その知られざる実態~」
転職者の「本当の退職理由」を調べる方法
入社志望者の借金は? 素行は? 経歴は本当?
などなど、採用企業が本気でお金をかければ調べられないことはありません。

高額所得者を雇うからこそ、志望者への調査は仔細に渡ります。調査の現場では、果たして何を調べられているのでしょうか?その方法とは一体どのようなものでしょうか?

本シリーズでは、実際にあった入社前調査の実例を、現役探偵が語ります。
転職者の「本当の退職理由」を調べる方法

■探偵への依頼はズバリ「本当の退職理由」

雇用調査についてのエピソードもいよいよ佳境。今回は「退職理由」についてです。履歴書には退職の理由として主に「一身上の都合により」もしくは「会社都合により」の二種類が書かれます。

採用担当者も当然退職の理由を尋ねますが、応募者が最も回答の準備をしてくるのもこの部分。自分の都合にせよ、会社が悪いにせよ、話を聞いてみるといかにも致し方なく辞めた人ばかりです。

前の職場のことを悪く言うと印象が良くないし、かといって正直に「嫌になったから辞めました」なんて言えるわけないし、と皆さん悩まれるところでしょう。ここは、「経営者の行っていた反社会的行為がどうしても許せなかったのです。しかし秘密保持契約上、細かいことは申し上げられません、すいません!」と言い切れば、担当者も根掘り葉掘り聞いてこないものです。

探偵への依頼はズバリ「本当の退職理由」。依頼を受けた探偵は元同僚のところに話を聞きに行きます。ちなみに外資系の企業であれば、元同僚・元上司に候補者のヒアリングを行う「リファレンス・チェック」は一般的に行われています。外資系企業が行うリファレンス・チェックは応募者本人が選んだ人にヒアリングを行うのが普通ですから、本当に知りたい答えが手に入らないということもあります。だから企業の人事は、私たち探偵にお金を払ってまで依頼を行うのです。

■一番簡単な調査方法は飛び込み訪問

昔であれば、採用担当者が元勤務先に直接電話をかけ、「○○という方から弊社にご応募があり、そちらにお勤めだったと履歴書にありましたので、その時の退職理由を伺いたいと思いまして」と問い合わせれば、理由を教えてもらえたものです。しかし今では時代が変わり、答えてくれる企業は100件中10件もありません。また、このやり方では本音を引き出すのは無理です。

最初に思いつく一番簡単な方法は、「○○さんはいらっしゃいますか?以前大変お世話になったので、近くに来たから是非ご挨拶をと思いまして」と、採用候補者が辞めた会社に直接出向くことです。営業でいえば、飛び込み訪問です。

コンビニエンスストアで買った菓子折りを持って同僚と話をすれば、客観的な意見を聞くことができます。しかし、「お世話になった」という前提があると、相手は遠慮して本音を話してくれないケースもしばしばあります。そのため、この方法は最善策とは言えません。

ではもっといい手は何か。会社から出てきた若い女性社員に(女性探偵であればその逆で、若い男性社員に)駅前で声をかけることです。ただし、これは今まで紹介してきたテクニックの中で、最も難易度が高い調査術です。メディアに登場する探偵の中には、こういうことが得意だと吹聴する人がたまにいますが、残念ながら私は一回も成功したことがありません・・・。

■仕事は遊びの経験も強みに変わるもの

こういう場面で強いのは、どういったタイプだと思いますか?

学生時代にナンパに明け暮れていたような人間が、非常に優れた能力を発揮するのです。元遊び人が、経営者やフルコミッションの営業マンになって大活躍するというのはよくある話。彼らの物怖じしない行動力には私も頭が下がります。

彼らはスーツ姿で、夕方から会社の近くで張り込みます。結婚指輪をしていない女性が会社から出てきたら、駅前、場合によっては電車に一緒に乗り込んで、声を掛けるチャンスを伺います。

それこそ、二人組で行って、ひとりが常にオネエ言葉を使って相手の警戒を解こうとするなど、涙ぐましい努力もあったりします。「お茶だけでも!」と言って本当にお茶だけで済ませてしまうのですから、コストパフォーマンスはなかなかのものかもしれません。

彼らのような能力の持ち主であれば、きっと探偵でなくても、それなりに成功するのではないかと思います。その辺りも含め、次回最終回では、探偵社の採用基準についてお話したいと思います。

■著者プロフィール
木島球六(きじま・きゅうろく)(仮名)

大学卒業後、某酒造系メーカーに就職。営業マンとしてそこそこの実績をあげていたが、だいぶ仕事に飽き始めていたところ、ある日ポストに入っていた「探偵募集」のチラシが目に入る。興味本位で探偵事務所を訪問してから早10年。今では事務所で一番のベテランとなっている。年間250本の調査依頼をこなす傍ら、採用責任者として年間50人以上の探偵志望者の面接も行っている。

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